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輸液製剤を考える②

こんにちは 😀 前回に引き続き、輸液製剤について話していきます。
まず、症例です。血圧と脈拍数、血液検査のNaに注目しましょう ❕

82歳男性。3日前より風邪気味で食事、水分はあまり摂れていない。体温38℃、血圧120/70mmHg、脈拍数85/分。血液検査:Na150mEq/L(正常値135~145mEq/L)。入院することになった。点滴加療の方針となりましたが、何を輸液しますか?

今回の患者さんは風邪で食事、水分が摂れておらず、脱水はありそうです。血圧、脈拍数は安定していますが、血液検査でNaが高値です。

血管内脱水でしょうか?細胞内脱水でしょうか?
Naが高いのは輸液を選ぶ際に影響するのでしょうか?

血圧と脈拍数が正常なので、血管内脱水の可能性が低そうです。となると、細胞内脱水の可能性が出てきます。
今回は血液検査でNaの値が高いのが気になりますね。脱水と関係があるか考えてみます。
まずはNaの単位を見てみましょう。

mEqは量、mEq/Lは濃度 です。

今回はmEq/LなのでNaは150という濃度であるのがわかります。Naは正常値は135~145mEq/Lなのでちょっと濃いですね。高Na血症です。

Naに限らず、何でもそうですが、濃い物質と薄い物質があった場合、水分は薄い方から濃い方へ移動します。
今回、血液は濃く、相対的に細胞は薄い状態となります。ですので、細胞から血液へと水分が移動します。その結果、細胞内脱水となります ❕

治療は細胞に分布する量の多い製剤となります。つまり、5%ブドウ糖液が望ましいです ❗

ブドウ糖液は血管内に入ると、ブドウ糖はすぐに使われなくなるので、ブドウ糖液は真水に変わります。
水は血管の膜も細胞膜も自由に通過することができます。そのため真水は自由水と呼びます。
人の体の水分は5%が血管、15%が間質、40%が細胞にあるので、
血管:間質:細胞=5:15:40=1:3:8
の割合で水分が存在することになります。

ブドウ糖液500mLを点滴した場合、500mL×8/12=333mLが細胞に分布します。

他の輸液はどうでしょうか?

500mL点滴したときに細胞に分布する量
生食:0mL
ソルデム1:167mL
ソルデム3A:252mL

ブドウ糖液が最も細胞内に分布する量が多いため、ブドウ糖が望ましいといえます。

輸液製剤だけでも奥が深い 🙁

ではまた!

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